戦後の1947(昭和22)年から1949(昭和24)年にかけての第一次ベビーブームに誕生した689.9万人(平成13年総務省統計局「人口推計年報
年齢各歳別人口」)は、いわゆる“団塊の世代”。
今まさに50歳代半ばを迎えたこの世代の人は、幼いときに病気になると「おいしいものをたくさん食べて、早く元気になりなさい」と励まされたものでした。食糧の質も量も十分でない時代に親はどこからか食べものを探してきて、病気の子どもに必死に食べさせていたのです。食事こそが、元気を取り戻す最大の武器でした。
そうした経験から、団塊世代は出されたものはすべて食べきって、ご飯1粒たりとも残さないという食行動をとるようになり、食卓に多くの品数を供することが最上のおもてなしと思い込みがちです。薄味でささやかな量では 粗食 と思っているふしはぬぐいきれません。
しかし今は、ものがあふれ、好きなもの、おいしいものが手軽に何でも手に入ります。選択の幅が広がるほうが食生活のバランスがとりやすいはずなのですが、身についてしまった習慣によってかえってバランスをくずしてしまい、過食や過栄養になるという異常な事態が起こっています。おいしいものをたくさん食べると病気になってしまうという、何とも奇妙な「偏食の時代」になったのです。
また、生活の中で移動のスタイルも大きく変わりました。日本自動車工業会によれば約80%の家庭がマイカーを保有し、公共の交通網がより細かく広がることによって、移動がとても楽な時代になりました。家にいながらにして相手に意思を伝えるIT(情報通信技術)や、ものが簡単に届く輸送手段の急速な進展も見逃すことはできません。日々の暮らしの中で、さまざまな便利さを得たことによって、私たちは以前に比べてからだを動かさなくて済むようになりました。
このような偏った食生活や運動不足をおもな原因として50歳代に襲いかかっているのが、糖尿病、高血圧症、高脂血症といった「生活習慣病」と、そのリスクファクターとしての肥満です。
近頃は“健康ブーム”で健康づくりへの関心は高く、人間ドックの受診者も大幅に増えています。ところが、生活習慣病に関する検査では、50歳代の受診者の約90%が「異常あり」の判定だったという調査結果が出ています。つまり、いつ生活習慣病になってもおかしくない爆弾をかかえた年代なのです。
これほどまでに「異常あり」が多ければ驚くに値せず、むしろ「異常あり」がごくあたり前であることを認めたうえで、これ以上検査の数値を悪化させない、生活習慣病を発症させないために具体策をどう講じたらよいかに目を向けたほうが賢明なことかもしれません。
働きざかりの現役であれば、仕事によって日々の生活習慣が大きく制約されがちで、「何かしなければいけないことはわかっちゃいるけど、なかなかできない」というのが大多数でしょう。とはいっても、50歳代にとってはもう、待ったなしなのです。
そこで、「忙しい」が言い訳にならない、とっつきやすくて必ずできる「健康づくり」の方法を提案しましょう。
それは、「もっと歩くこと」です。
もちろん、歩くだけで生活習慣病や肥満を予防したり改善できるわけではありません。食生活、休養、喫煙、飲酒といったライフスタイルや、遺伝要因、ストレスなどの外部環境要因が深く関わっていますし、医学的な治療ももちろん必要です。
しかし、まずは「歩く」ことからはじめるだけでも間違いなく効果があることは科学的に証明されています。
定年を迎えてもずっと楽しく健康に、「やっぱり、からだが資本」を実感するための処方箋を実行するのは、あなた自身。55歳からでも決して遅くありません。
(「はじめに」より)