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これだけは知っておきたい労働法7

派遣・契約社員 働き方のルール

05/19

派遣・契約社員 働き方のルールの表紙:クリックすると大きくなります

脇田 滋 著

A5判 並製 168頁
定価(1,600円+税)
ISBN4-8451-0728-7 C3032

【著者プロフィール】

脇田 滋(わきた しげる) 龍谷大学法学部教授(労働法、社会保障法担当)。1948年大阪市生まれ。76年京都大学大学院法学研究科博士課程単位取得のうえ退学。96年よりホームページ「派遣労働者の悩み110番」を開設し、電子メールによる相談活動を開始する。労働分野と社会保障分野の「構造改革(=規制緩和)」をめぐる動向に強い関心を持って注目し、発言している。

http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/

【主な著書】

主な著書に、『労働法の規制緩和と公正雇用保障』(法律文化社)、『派遣社員の悩みQ&A』(学習の友社)、『規制緩和と労働者・労働法制』(編著、旬報社)、『派遣労働の法律と実務』(共編著、旬報社)、「雇用・就労保障と社会保障法」『講座社会保障第6巻 社会保障の関連領域』(日本社会保障法学会編)など多数。

【著者からのメッセージ】

働き方の違いを超えて
激増する派遣社員・契約社員

 パートタイム労働と並んで、1980年代以降、派遣社員や契約社員など多様な非典型的な雇用・就労形態が急速に増えている。80年代には、労働行政がパートタイム労働を公認し(パートバンクの設置など)、1985年には、従来は違法であった労働者供給を一部適法化するために労働者派遣法(以下、派遣法と略称する)が制定され、派遣社員という働き方が認められることになったのである。1990年代になって、雇用状況の悪化やリストラの動きが強まり、従来の正社員雇用に代わって契約社員と呼ばれる雇用形態が生まれ、派遣社員とともに急速に拡大・進展してきた。

 1999年6月30日、派遣法が改定され(新派遣法)、従来の「原則禁止・例外適用」から「原則自由・例外禁止」に大きく変わった。99年12月に施行された新派遣法から約2年が経った。その後、紹介予定派遣の制度も導入され、派遣で働く労働者が加速度的に増えている。2000年秋には、緊急な雇用対策の一環として新派遣法の一部見直しがあり、さらに3年後の見直しが前倒しで実施されようとしている。

派遣・契約社員の現実

 派遣社員や契約社員は、働く者の希望に応えた新しいスタイルの働きかたであると宣伝されている。仕事や職場を自由に選ぶことができ、いやな上司やわずらわしい人間関係、長時間・過密労働や不本意な配置転換を拒否できること、色々な仕事を経験することで自分の視野やスキルを向上させることが魅力とされているようである。
 しかし、派遣社員や契約社員の働き方や環境は、決して十分なものとは言えない。むしろ、長く働いたのに突然切り捨てられたり、待遇の点で報われないという思いを抱く、というのが実際の派遣社員や契約社員の共通した声となっている。雇用の安定や権利の保障という点からは、実に多くの問題を含んだ働きかたと言える。
 派遣社員や契約社員については、十分な保護や格差是正の必要性が早くから指摘されてきた。また、1990年代には、ILO(国際労働機関)が非典型雇用労働者の保護を求める条約や勧告を相次いで採択している。同じ職場で同じように働いても労働条件が正社員より格段に低く、また、いつ職を失うかもしれない不安定雇用について、ILOは公正雇用に反する恐れが強いと考えて、その弊害を極力なくそうとしているのである。EU諸国の法制度も同様な考え方に立っているので、この点では、労働法の規制緩和を推し進めている日本の労働立法・労働行政のあり方は、国際的な労働者保護の流れに反するものと考えられる。本書の特徴―さまざまな相談事例から

 私は、1980年代以降の非正規雇用の拡がり、とくに派遣社員や契約社員の働き方に強い関心を寄せてきた。民主法律協会派遣労働研究会に参加して、大阪地区での労働者からの相談を受けるとともに、1996年夏にインターネット上に「派遣労働者の悩み110番」のホームページ(http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/indexhkn.htm)を開設し、電子メールによる相談活動を開始した。全国から毎日のように相談メールが寄せられている。5年間に相談者は約3000人を超えた。派遣社員だけでなく、契約社員、嘱託、非常勤、個人事業主(業務請負)の方からの相談も少なくない。

 また、1998年から2年間、京滋地区の私立大学教職組合連合の責任者を務めたときに、「大学教員任期制法」の問題や大学非常勤講師の雇用問題に取り組んだ。その経験から、契約社員などの問題を考える「有期雇用(期限付き雇用)」のページを開設することにした。 本書は、こうした相談や組合役員としての活動を元にして、派遣社員と契約社員をめぐる法律問題の基礎を解説している。新たな法改定の動きやその内容をできるだけ盛り込むようにした。とくに、働く者の側にたった実際の相談・回答例のなかから約30の事例を通して派遣社員や契約社員の疑問に答えている。

 たしかに、現行労働法令の労働者保護規定はきわめて貧弱であるし、一層緩和する動きもある。しかし、消極的な行政機関も、労働者自身が粘り強くがんばることで法に従った改善をするように活用することが可能である。日ごろから自分自身を守る知識を身につけておけば、無用なトラブルを予防することにもなる。

 過去の相談事例では、地域や職場の労働組合の協力を得たときには本来の解決に向かうことができた。是非、地域、業種、職場で労働者からの相談を受け止めようとする労働組合の相談担当者の方に本書を活用していただきたい。また、正社員の雇用が危機にさらされ、派遣社員や契約社員になる例が急速に増えている。正社員だけで雇用や労働条件を守れる時代ではなくなっている。雇用形態の違いを超えて本書を広く読んでいただければ幸いである。

 なお、本書では、一般的な叙述のときには派遣社員という表現を使っているが、法的な説明の箇所では、派遣労働者という法律用語を使用している。

【目次】

第1章 労働者派遣法と派遣という働き方

 労働者派遣法が施行されて以降、派遣社員が増加し続けている。通常の労働者と使用者の二当事者とは大きく異なり、派遣社員、派遣元、派遣先の三面的法律関係は複雑で分かりにくい。派遣法の適用を回避しようとする業務請負など類似の働き方との区別を正確に理解しておく必要がある。

基礎知識@労働者派遣法と派遣労働の登場
基礎知識A労働者派遣事業とは
基礎知識B派遣労働関係の特徴
基礎知識C派遣労働者の保護

Q1 派遣社員と正社員―派遣労働のメリットは
Q2 常用型派遣と登録型派遣―常用型と登録型はどう違う
Q3 業務請負(業務委託)と労働者派遣―派遣と業務委託はどう違う
Q4 違法派遣類型―さまざまな違法派遣
Q5 二重派遣―派遣会社から派遣会社への派遣
Q6 派遣元と派遣先の責任―使用者としての責任は誰が負うのか

第2章 派遣社員の契約をめぐる問題

 派遣社員をめぐるトラブルで多いのは、複雑な関係から生ずる契約関連の問題である。登録から派遣就労、さらには中途解約や派遣先直用など、三面関係のなかで、法の建前に反する慣行も広がっているが、最も弱い立場の派遣社員に矛盾や負担が転嫁されている。

 さらに99年新派遣法は、派遣業務を原則自由化する一方で、1年ルールによって派遣労働=一時的労働という考え方を導入した。初めて、派遣先による直接雇用を努力義務として明確化した。他方で紹介予定派遣も広がろうとしており、派遣制度はますます複雑な様相を示している。法改正の動きのなかで、大きく揺らぐ労働者派遣制度の根幹を考察する。

基礎知識@登録から派遣先決定へ
基礎知識A派遣労働者の個人情報
基礎知識B労働条件と就業条件の明示
基礎知識C1年ルールと派遣先への直接雇用
基礎知識D紹介予定派遣
基礎知識E社会・労働保険

Q7 就業条件の明示―契約以外の仕事を命じられたら
Q8 期間途中の退職―派遣期間の途中で辞めたくなったら
Q9 派遣契約の中途解約―派遣先の都合で途中解約されたら
Q10 派遣法改正とクーリング期間―クーリング期間の意味と機能は
Q11 派遣先への雇用―派遣先から正社員になってほしいと言われたら
Q12 派遣社員と社会保険―社会保険の加入は自由に選択できるの
Q13 派遣社員と雇用保険―社会保険・労働保険付加入は違法
Q14 雇用保険の離職理由―派遣の終了と雇用の終了
Q15 派遣社員と税金―税金還付を受けるには

第3章 派遣社員の就労をめぐる問題

 派遣社員の雇用主は派遣元というのが法の建前であるが、労働者派遣法は派遣先事業主にも多くの使用者責任を課している。しかし、派遣社員を指揮命令する立場にありながら、法律によって求められる責任に無自覚な派遣先事業主が少なくない。派遣先は、派遣社員の就労にかかわる労働時間や安全衛生、さらにはセクハラや母性保護の面では、主に責任を負う使用者とされている。派遣社員に対する派遣先事業主の責任を中心に解説し、同時に、職場における派遣労働者の権利を明らかにする。

基礎知識@労働基準法の適用
基礎知識A安全衛生・職場環境
基礎知識Bセクハラ防止・出産と育児

Q16 派遣社員の労働時間、残業―派遣労働者が深夜労働をしたら
Q17 派遣社員と有給休暇―契約満了前の有給休暇をとりたいが
Q18 派遣社員とセクハラ―派遣先でのセクハラ
Q19 派遣先での労災事故―派遣先で労災にあってしまったら
Q20 派遣労働者と労災補償―派遣労働者の労災補償では給付基礎日額の計算は不利になる?

第4章 契約社員という働き方

 契約社員という雇用形態が90年代後半から突然出現した。正社員と同様な業務負担にもかかわらず、期間を定めた不安定雇用であって待遇は格段に低い。個別労働契約による労働条件決定を前提にした新たな雇用類型である。正社員雇用を根底から変え、労働法の役割を大きく後退させる契約社員という働き方は、さらに年俸制や裁量労働制とも親和的なものである。まさに労働法の規制緩和が生み出した新たな雇用形態=契約社員のもつ意味と法的問題点を究明する。

基礎知識@契約社員とは
基礎知識A労働契約と労働条件の明示
基礎知識B契約労働と個人請負
基礎知識C社会・労働保険

Q21 契約社員と正社員の違い―「契約社員」とは
Q22 雇用期間満了と解雇―契約更新を拒否されたら
Q23 均等待遇と労働法令―契約社員と正社員の労働条件は違っていいのか
Q24 契約社員と社会保険加入―事業主が社会保険加入を怠っているが

第5章 契約社員の就労をめぐる法律問題

 契約社員も労働者として労働基準法などの適用を受けるが、現実には正社員とは違って、法律の保護は受けられないといった「誤った常識」が広がっている。前章の契約にかかわる問題と並んで、労働時間、賃金、有給休暇や母性保護をめぐって契約社員については多くの具体的な問題がある。実際の相談のなかからよくある事例を選んで解説する。

基礎知識@契約社員と賃金・労働時間・休日・休暇
基礎知識A契約社員と就業規則
基礎知識B契約社員と女性・母性保護

Q25 契約社員と有給休暇―契約社員は有給休暇がとれないのか
Q26 契約社員と賃金―契約社員化と年俸制の導入
Q27 契約社員と女性保護規定―契約社員の出産や育児に関する権利は

第6章 派遣・契約社員の権利を守る

 派遣社員や契約社員のほとんどは、雇用不安定ということから権利主張も困難であり、労働者連帯による支援を受けることも少なく、まったく孤立無援な存在である。憲法が予想しなかった無権利な状態の克服は労働者全体の課題である。比較的に恵まれた状況にある正規雇用の組織労働者の責務は重く、もはや非正規雇用労働者の権利擁護の課題を避けることが許さる段階ではない。問題解決のために必要な組合の役割、行政機関の活用の意味と方法を考える。

基礎知識@権利を守る手続きと方法
基礎知識A労働組合の組織と加入

Q28 派遣先責任の追及―違法派遣で派遣先雇用を求めるには
Q29 正社員の組合としての課題―非正規労働者の権利と利益を守るには
Q30 行政機関の種類と活用法―行政機関を上手に活用しよう

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