旬報社ホームページは移転しました。
新しいURLは、http://www.junposha.com/になります。
ブックマークに登録されている場合は、URLの変更をお願いいたします。

ポリティーク第10号

06/03/10

創刊の辞編者紹介

ポリティーク第10号の表紙:クリックすると大きくなります

特集 現代日本のワーキング・プア

定価(本体2,200円+税)
A5判・並製・224頁
発行日 2005年9月20日
ISBN 4-8451-0943-3 C3036

【目次】

特集 論説

現代のワーキング・プア―労働市場の構造転換と最低限生活保障……後藤道夫
雇用と働き方から見たワーキング・プア……伍賀一道
中年家族持ちワーキング・プアの生活と社会保障改革……唐鎌直義
ワーキング・プアと最低生活費(貧困)基準……布川日佐史
ワーキング・プアの増大と「新しい労働運動」の提起……木下武男

インタビュー

【現代社会運動の経験】個人加盟ユニオンの現在、そして未来(名取 学)

連載

【地域の現場から】中越大震災地域の復興をめぐる二つの道―人間復興か構造改革か(岡田知弘)
【思想の現在】世界の貧困、貧困の世界(渡辺雅男)

ブックレビュー

【現代日本を読む】生活賃金運動が提起する論点を探る(居城舜子)
【社会科学の古典を学ぶ】シティズンシップ論と福祉国家の再編―日本における生存権理念の再構築にむけて(伊藤周平)

【特集の趣旨】

 「ワーキング・プア」は、最低限度の消費生活を営むにたる所得以下の勤労世帯を指す言葉である。1990年代後半から日本型雇用の解体が急速に進み、雇用条件と賃金水準は大幅に下落し、くわえて、税制と社会保障の「構造改革」は低所得層の負担を増大させた。ワーキング・プアは急増し、所得が生活保護基準以下の世帯は、勤労世帯全体の2〜3割程度と推測できるまでになっている。

 ワーキング・プアの急増をくいとめるはずの賃金規制と最低限生活保障措置は、開発主義国家体制(開発主義国家+企業主義統合)の下で、特殊な「底抜け状態」を呈していた。それにくわえ、日本の労働組合が争議権を武器とした交渉能力を全体として失ってから久しい。こうした状況の下で、「構造改革」が行なわれたため、ヨーロッパ諸国に比して、ワーキング・プア急増への社会的抑止力はきわめて脆弱であった。

 実際にはこれまでも、ワーキング・プアは大量に存在した。しかし、高度経済成長後半期以降、その存在は隠蔽・抑圧され、大きな社会問題となることは稀であった。今日のようにワーキング・プアの急増がだれの目にも明らかになると、その大量存在の認知は、現在の社会システムに巨大なインパクトをもたらすことになる。

 まず、多数の勤労者世帯が、生活保護制度等があるにもかかわらず、国民としての最低生活水準を実現できていないということは、本来、あってはならないことのはずである。現在の政治環境の下では、その社会問題化は「生活保護基準が高すぎる」という逆の反応を引き起こし、それに連動して、労働不能人口への保障基準を大幅に引き下げる圧力となる。生活保護基準の引き下げはすでにはじまっており、公費医療制度や障害者福祉も大幅に後退しはじめた。

 ワーキング・プアの急増は、第二に、「暮らせる賃金」という社会常識の崩壊を意味し、経営者の社会的責任の感覚を後退させるため、進行中の賃金水準破壊をいっそう促進する。

 第三に、ワーキング・プアは社会的に未組織状況であることがほとんどであるため、その拡大は、社会的対抗力・規制力の急落をもたらす。「砂のような国民」部分が増加し、「低所得階層」が固定化され、階層格差はより構造的に増大する。犯罪や家庭崩壊など、社会的貧困の蓄積による矛盾は拡大し、社会統合危機がもたらされる。

 第四に、階層格差の拡大と社会統合危機の増大は、上層国民を社会秩序維持の中心に押しだし、新たな「上層社会統合」を促進することとなろう。ワーキング・プアの急増は、「構造改革」による社会変動の構造的焦点なのである。

 本特集は、ワーキング・プア急増の実態とその背景を、労働力市場、勤労者の生活構造、および社会保障制度の諸側面から明らかにするとともに、それがもたらす社会的影響をさぐり、ワーキング・プア急増を抑止する、あるいはワーキング・プアが主体となる新たな運動と政策の課題を考えることを目的としている。

 後藤道夫論文「現代のワーキング・プア── 労働市場の構造転換と最低限生活保障」は、ワーキング・プアの規模を部分的に推計するとともに、ワーキング・プア急増の背景となっている最低生活保障の「底抜け構造」を、それが形成された高度経済成長期にさかのぼって検討し、現代のワーキング・プアをとらえる歴史的視点を提示する。

 伍賀一道論文「雇用と働き方から見たワーキング・プア」は、大量のワーキング・プアを生み出す現在の労働市場の状態を、非正規雇用、なかでも派遣、業務請負に焦点を当てて分析し、国際的・国内的な労働基準の再確立の必要を提起している。

 唐鎌直義論文「中年家族持ちワーキング・プアの生活と社会保障改革」は、総務省「家計調査」を用い、勤労者世帯の第T・10分位階層の収入・消費実態の変化に焦点を当てて、勤労所得の低下、「社会的固定費」による圧迫、勤労者負担率の上昇による「家計破綻の瀬戸際」状況を描き出し、「ワーキング・プアがワーキング・プアでいられなく事態」の到来を警告する。

 布川日佐史論文「ワーキング・プアと最低生活費(貧困)基準」は、最低生活基準にかかわる諸論点をつっこんで検討し、今回の「生活保護の在り方に関する専門委員会」の議論が、「国民の一般的な生活様式」を基準とする80年代の考え方を捨て、非常な低所得層(第3〜第5・50分位)の消費水準を基準とする考え方で行なわれたことの問題性を指摘する。

 木下武男論文「ワーキング・プアの増大と『新しい労働運動』の提起」は、労働社会の二極分化が進行している現時点で、企業別の組織形態をとってきた戦後労働組合運動が最終的後退局面にあることをふまえ、低処遇正規・非正規からなるワーキング・プアを、地域ごとの産業別・職種別結集をもった、個人加盟の新しい労働組合に組織することの重要性を主張する。[後藤道夫]

前の表示に戻る

ポリティークに移る

社会・労働コーナーに移る

トップページに移る

ご意見、ご感想、お問い合わせは旬報社まで