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環境問題の未来シリーズ5

よみがえれ いのちの川よ

04/09/17

19歳からの釣り行脚
日本初の女性アウトドアライター
長良川河口堰反対運動に立つ
今、川直しの時代からダム撤去の時代へ
私の中のアマゴとともに

よみがえれ いのちの川よの表紙:クリックすると大きくなります

天野礼子+聞き手・山岡寛人 著

A5判変型 上製 110頁
定価 987円(本体940円+税)
発行日 2004年8月5日
ISBN 4-8451-0895-X

【著者プロフィール】

天野 礼子(あまの れいこ) 1953年、京都市生まれ。同志社大学文学部美学科卒。
19歳の春に始めた釣りにのめり込み、卒業後も国内・海外の川・湖・海を釣り歩く。
小説家・開高健氏に師事し、“わが国初の女流アウトドア・ライター”の名を与えられる。
1988年から、本州で唯一ダムをもたない天然河川・長良川を守る運動のリーダーを務め、1997年に「公共事業チェックを求めるNGOの会」(402団体)の代表に就任する。2001年、「脱ダムネット・ジャパン」(本部・長野県)の代表に就任、日本の川を救うために東奔西走している。
著作多数。『「緑の時代」をつくる』(旬報社)、『あまご便り』『萬サと長良川』『川は生きているか』『川よ』『ダムと日本』『ニッポンの川はすくえるか』『公共事業が変わる』『市民事業』『日本の名河川を歩く』などがある。近著『ダム撤去への道』(五十嵐慶喜との共著、東京書籍)。

あまご便りホームページ http://www.uranus.dti.ne.jp/~amago

山岡 寛人(やまおか ひろと) 1944年、東京都杉並区生まれ。
東京教育大学卒。現在、東京大学教育学部附属中等教育学校で、中学生・高校生に理科・生物を教える一方、自然・生物・環境にかかわって幅広く活動。
著書:『スギ林はじゃまものか』『くるま社会』『魚が恋する海』『里山はトトロのふるさと』『草も木も動いている』(ともに旬報社)、『中学生のフィールドワーク』(アリス館)、『環境破壊はとめられない!?』(ポプラ社)、『21中学授業のネタ 環境教育』(日本書籍)など多数。

【編者からのメッセージ 山岡寛人

 天野礼子さんと話をしていて、子どものころのことをだいぶ思い出した。

 私も「ミズガキ」の一人だった。1950年代、東京の近郊の宅地開発が始まりだしたころのことである。小学校が休みの日や放課後はたいてい近くの善福寺池、善福寺川へ遊びに出かけた。池の端や川岸はほとんど土のままで、所どころ矢板で止められていた。池の端にはヨシが茂り、その間をフナの稚魚が泳ぎまわっていた。カイツブリやバン、それにヨシキリが巣を作っていた。

 岸から網でフナの稚魚やチチブ(ダボハゼ)、ドブガイをしゃくったりして遊んだ。夏の暑い日には岸辺の大きなエゴノキの枝にシャツやパンツをぶら下げ、真っ裸になって池で泳いだ。池の底にはカナダモが密に生えていて、腹を不気味にくすぐった。川でナマズをすくったこともあった。

 アメリカザリガニが池や川の岸辺に掘った巣穴に潜んでいた。穴の口には泥でふたがされていて、子どもたちはそれを「ブク」と呼んでいた。「ブク」を見つけると、泥のふたを取り払い、一気に腕を突っ込んでザリガニを引き出す。雌雄二匹が確実に捕れた。バケツに一杯も捕って帰り、腹はゆでて食べ、残りは鶏に食べさせた。

 小学校高学年になると、多摩川で泳ぐことが許された。バスや電車を乗り継いで是政に出かけた。鉄橋の下が子どもたちの泳ぎ場だった。善福寺川では見かけないハヤの姿が印象的だった

 こうして断片を並べ立てると、天野さんが子どものころに遊んだ紙屋川とはえらい違いだ。動物相を比較すると善福寺池や善福寺川の水質は紙屋川に数段劣ることがわかる。それに、開発が進行して田んぼが宅地にどんどん変わりだし、善福寺川から下水の臭いが立ち始めるようになっていった。川に投げ込まれた空き瓶で足に大怪我をしてから池や川から遠ざかるようになってしまった。かわりに昆虫採集に熱中した。「ミズガキ」を絶滅させないようにするには智恵の伝承とともに、清流を取り戻すことが必要だろう。

 天野さんの著書は多数ある。しかし、子どものころのこと、修行中のこと、そしてこれからの生き方についてこんなに多くを語ったのはこのインタビューが初めてだと思う。環境問題の未来は一人ひとりの生き方がかかっているのだということをあらためて感じた。

 天野さんの著書を何冊か読んだが、いちばん気に入ったのは、インタビュー中に話したようにやはり初期の作品である『萬サと長良川』(筑摩書房・1990年)である。長良川の川漁師・吉田萬吉・人呼んで「萬サ」と「萬サ」とかかわった釣り師・山本素石、生態学者・今西錦司などからの聞き書きを中心にまとめたものだ。それぞれの人物の飄々とした語り口が、豊かな長良川をまるで一緒に眺めているような気にさせてくれる。そして、長良川の大切さが、「唯一の天然河川、長良川を守れ」という河口堰反対運動のスローガン以上の重みを持って私たちに伝わってくる。この本は残念ながら重版未定のようだ。『ちくま文庫』にもあるようだがこれも重版未定。図書館か古本屋さんで見つけて読んで欲しい。

 各地に残された豊かな川のすばらしさについて、川をめぐった生業と結びつけながら紹介した近著『日本の名河川を歩く』(講談社+α新書・2003年)はコンパクトだが、読み応えがある。

 清流を守る運動、河川行政の問題点、さらには解決の道筋を示す『ダムと日本』(岩波新書・2001年)は重い課題を投げかけるが、明快な論旨の訴えるところは大きい。

 最近の天野さんは「ミズガキ」の復活を夢見ているようだ。『日本の名河川を歩く』の前書きに「日本中に水で遊ぶガキ共がうようよ生まれたら、川は『正しく』よみがえることができるにちがいない」と書いている。インタビュー中に天野さんからお話の出た高知県池川町での実験はまさにおとな版「ミズガキ」の実践である。子どもだけでなく、おとなもターゲットにいれ始めたようだ。この思いは『川よ』(NHK出版・1999年)の巻末に収められている次の詩の一節を大きく膨らませたものなのだろう。

「川からいのちが消えた時 川で遊んだ水ガキが
 川の不幸を哀しんで 森や海へと呼びかけた
 地球を救えと呼びかけた
 川よ 川よ よみがえれ 森から海へ 海から森へ いのちの川よ」

(「川よ よみがえれ」天野礼子・作より) 

 インタビューは東京駅前のホテルの会議室で行なわれた。インタビューを終えて、天野さんのフィールドでお話をうかがえばよかったとつくづく思った。

【目次】

1――そこに川があるから

私の中には“アマゴ”が棲んでいるんです!

花嫁修業と称して日本中を釣り行脚

開高健さんに弟子入りし、竿を持たずに世界を放浪

“長良川”が危ない! と河口堰反対運動に立つ

2――川に生かされて人は生きる

一五年、年間一〇〇日を釣り続けて、川の“目利き”になる

川と共生するための知恵を失ってしまった

海が豊かな森を育てる

木を運び、石を置いて、川を再生する

官僚が日本人をバカにしてしまった!

3――ミズガキの“おたけび”

絶滅危惧種になった“ミズガキ”の復活は成るか

日本もダムの功罪を総括するときが来た

国会議員のネジを巻いて奮起をうながす

「小さな実験」――緑と清流の再生をめざして

4――川がよみがえるために

ほんとうに強い力は遊びから生まれる

天然の力を取り戻すことが何よりも先決だ

美しい未来を勝ち取るために

後記

索引

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