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環境問題の未来シリーズ1

くるま社会

2004/09/17

 新しいまちづくりが始まった!
 自動車社会のもっとも深刻な問題は、都市を破壊してきたこと。都市をどう再生していけるのか、その視点とは何かを語っています。ヨーロッパ、アメリカでは、すでに維持可能な都市(サステイナブルシティ)を掲げて自動車を制御する都市再生がすすんでいます。
 日本では困難に見えますが、著者自身もかかわってきた大阪・中之島の歴史的建造物保全、北海道・小樽運河の保全、福岡・柳川堀割の保全など、20年、30年という粘り強い町づくりのとりくみによって、都市は蘇ってきています。そうした経験をまじえながら、都市再生の可能性を語ります。

くるま社会の表紙:クリックすると大きくなります

宮本憲一+聞き手・山岡寛人 著

A5変型 上製 110頁
定価 987円(本体940円+税)
発行日 2004年11月20日
ISBN4-8451-0827-5 C0036

【著者プロフィール】

宮本 憲一(みやもと けんいち) 1930年、台北市生まれ。
名古屋大学経済学部卒業、金沢大学助教授、大阪市立大学教授、立命館大学教授を経て、現在、滋賀大学学長。
日本地方財政学会理事長、自治体問題研究所理事長、日本環境会議代表理事等を歴任。堺市「西野の森」を守る運動、「コミュニティ・グリーン条例」づくり、宮本塾等を実践。
主な著書:『社会資本論』(有斐閣)、『都市経済論』(筑摩書房)、『現代資本主義と国家』『環境経済学』『日本社会の可能性』(以上、岩波書店)等多数。

山岡 寛人(やまおか ひろと) 1944年、東京都杉並区生まれ。
東京教育大学卒。現在、東京大学教育学部附属中等教育学校で、中学生・高校生に理科・生物を教える一方、自然・生物・環境にかかわって幅広く活動。
著書:『スギ林はじゃまものか』『魚が恋する海』『里山はトトロのふるさと』『よみがえれ いのちの川よ』『草も木も動いている』(ともに旬報社)、『中学生のフィールドワーク』(アリス館)、『環境破壊はとめられない!?』(ポプラ社)、『21中学授業のネタ 環境教育』(日本書籍)など多数。

【インタビューを終えて 山岡寛人

 宮本憲一先生との出会いは『恐るべき公害』・『日本の公害』・『地域開発はこれでよいか』(いずれも岩波新書)という著書を通してである。今から30年ほど昔のことだ。当時、私たち高校理科の青年教師たちは先輩の教師たちとともに、川鉄公害事件を中心とした千葉県の公害問題に取り組んでいた。宮本先生の著書は、私たちに社会科学の視点を示した。それとともに、自然科学の基礎を子どもたちに教えるという理科教育に対しても問題を提起していると私は思った。こうしたことがきっかけになって私の教える高校理科(生物)に地域の問題を考えることが流れ込み始めた。

 時代は公害問題を環境問題、さらには地球環境問題に置き換えていった。そして、私は中学理科も教える現在の学校に異動した。千葉から江戸川を越えて東京に通勤する私にとって東京の空気(大気)は息苦しかった。だが、東京の大気汚染は大きな問題として取り上げられてはいなかった。公害は終わったことだとされていたのだ。

 中学理科の投げ込み教材として庭木の葉を水で濡らしたティッシュペーパーで拭く実習をした。子どもたちは黒ずんだティッシュペーパーにたいした驚きを示さなかった。黒ずんだ汚れが自動車のまき散らす粉じんであることを強調するなかで、子どもたちは揺り動かされ始めた。川鉄公害事件では高炉の煙突から排出される煙の粉じんが問題にされた。

 東京から公害問題がなくなったわけではないのだ。大気汚染では、汚染源(加害者)が特定の工場から不特定多数の自動車に変わった。バスを利用する子どもたちも間接的ではあるが加害者に位置づけられてしまう。どのように解決していけばよいのか。自動車を全面的に否定することはできない。難問である。

 今、私は高校2年生を対象に理科の選択科目として地域自然研究という講座を開講している。この講座は学校が所在する中野区、もう少し広げると武蔵野台地、さらには東京都という地域にこだわりながら、フィールドワークを重視している。また、地域を自然科学の立場から追求するだけでなく、さまざまな社会科学の成果あるいは文化そのものを取り込みながら地域をトータルに把握することまで目指している。

 1年間の学習の終盤では、それぞれの子どもが冬休みなどを利用して自分の居住する町についてフィールドワークを行う。そして、これをふまえながら自分の町のアメニティーを評価し、自分の町の環境を少しでも良好なものとする地域計画・地域政策を策定する。ここでは一年間にわたって学んできたさまざまな調査・研究の手法、あるいは事例を自分の町にいかすわけである。これが一年間の学習の総まとめになる。

 こうした環境教育を実践する大きなきっかけになったのは宮本先生の著書である。子どもたちが書き上げた地域計画・地域政策のレポートをもってぜひとも先生のお話をうかがいたいと思った。宮本先生は多忙な時間をさいてインタビューに応じてくださった。話は自動車の問題から始まった。

 このインタビューでは、宮本先生の提唱する「内発的発展論」の展開を十分に語っていただく時間がなかった。『日本社会の可能性――維持可能な社会へ』(2000年、岩波書店)にそのことは詳しい。宮本先生はサステイナブル・ソサイティ(維持可能な社会)という課題の解決の手法は「経済学の力だけでは不可能であり、社会科学の総体のみならず、自然科学をふくめた学際的な研究」だとする。これまでに進めてきた研究の成果を駆使しながら新しいシステムをいかに構築するかをこの著作で展開。私が高校生たちといっしょに進めている「地域自然研究」という講座はまさにこれである。

【目次】

1 自動車がもたらす社会的損失

日本社会のマイナス面を累増している自動車社会
自動車王国アメリカも公共交通運輸機関を復活
サステイナブルシティ・プログラムとその四原則
自動車は年の基本的あり方を壊している
根本的に考え方を変えなかったところに“失われた20年”がある

2 システムが問題だ

社会・経済的システムに目を向けよう
公害問題と環境問題との間を切ってはいけない
便利さを求めて自動車を利用するとかえって不便になる

3 都市再生の可能性

自動車会社自身も自動車時代がいつまでも続くとは思ってはいない
「水の都」再生にとりくんでみて
少数派から出発して少数派に戻る
環境税導入のゆくえ
国道43号線差し止め訴訟

4 廃棄物の問題をどう解決するか

汚染者負担原則=PPP
ラブ運河事件とスーパーファンド法
住民の健康から土壌汚染の規則を
「公害は終わった」わけではない
廃棄物は焼却すればいいのか
環境技術や環境企業の発達は手放しでは喜べない

5 なぜ、都市と農村との交流が必要か

ヨーロッパでは義務づけられる市民農園
農村と共存しないと都市は存続できない
自然災害に耐えられなくなってきた中山間地
農村がなくなって農業がだめになってもいいのか
宮本塾――都市と農村との交流の試み
地元の資源を生かして産業の連関を密にする
長野県望月町でのとりくみ
都市の人間が農村に居着くということ

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